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備前焼による鋳込み形成に挑戦 [陶芸]

 冷たいビールが飲みたい。備前焼のビアマグを冷蔵庫できりりと冷やしておく。しかもそのビアマグは薄づくりで大きめでなければならない。あの備前焼独特の野性味が気持ちをそそる。中ビン1本をなみなみと注いで一息にのどを潤す。疑いようもなくビールは最初の一杯が最高にうまい。それにすべてがかけられる作品を作ってみようではないかというのが今回のテーマである。
   しかし、大きめの備前焼のビアマグで、しかも薄づくりなどみたことがありません。なぜなら大きく、薄くろくろで挽くなど容易な作業ではなく、手作りではとても量産が割に合わないからでしょう。型作りなら容易にできますが、手作り感のない備前焼など、だれが求めましょうか。まして、あったにしても食器棚に入らない大きさです。絶対に主婦は購入しません。したがって市場に出回らないのは当然です。      
  さて、私は仲間と形のそろったビアマグで至福の一瞬を味わいたいのです。となれば型による鋳込み形成で作るしか手に入れる方法はないのです。
 
用意するもの
 
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備 前 土 布テープ 計量カップ 柄杓・漏斗 ろ く ろ
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塩化ビニールパイプ
(直径14㎝)
陶芸用粘土 ケイ酸ナトリウム
(水ガラス)
陶芸用小道具 油 粘 土
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石  膏      撹 拌 機    
 
型づくり

①   塩化ビニルパイプ(直径14センチ程度)を加工します。長さ  25㎝に切断し、二つ割にします。大きなホームセンターでは100円程度で切ってくれるところもあります。         
 布テープで切断箇所を厳重につなぎ、片側が開くようにしておきます。もう片方の切断面は石膏が漏れない程度に布テープでふさいでおきます。 
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② ろくろで大きめにビアマグを水びきします。今回は一つ型で作りますので、型から抜けないような形にならないように形成します。
 あくまでもこれは型取りの原型なので、厚めに作っておくのがよいです。早く乾燥してしまうと後で石膏型から取り出しにくくなるからです。
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③   半乾きになったところで底を削ります。この時全体の形が理想的になるように削り込み、なめし皮で滑らかにしたり、指で意図的にろくろ目をつけたり、櫛やへらで装飾をします。
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④   ビアマグの型を伏せた状態で塩化ビニルパイプをかぶせ、パイプの下部と台との隙間を油粘土でふさぎます。これにより流し込む石膏の下からの流出を防ぎます。陶芸用粘土でもふさげますが石膏の混ざった粘土はそのあと使い物になりませんから、くず粘土使いましょう。
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⑤ 溶いた石膏を気泡ができるだけ残らないようにていねいに撹拌してから流し込みます。石膏を水でゆるく溶くと気泡は抜けやすいですが、型の強度が減るので石膏は適量の水で溶きましょう。   
 石膏型の強度が下がると4~5回の使用で型が変形し、使い物にならなくなります。
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⑥   石膏がかたまったら型からはずして型を傷つけないように注意し、中の粘土も抜き取ります。水分の多い石膏型は傷つきやすいので内側には細心の注意をはらってください。乾燥させてから水で洗い流すのがベストでしょう。         
 離型剤は特に必要ありませんでしたが、塩化ビニルにカリ石鹸でも塗って乾燥させておけば心配ありません。
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⑦   石膏型は2~3日屋外で自然乾燥させます。基本的に触ったとき冷たく感じなければ乾燥したといえます。     
  鋳込み作業の後も同じように乾燥させますが、決して電熱器などの熱源で乾燥させてはいけません。60度以上に熱すると結晶水まで追い出してしまい、石膏型の強度が低下します。
 
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泥漿づくり  
 
 泥漿とは、粘土に最小限の水とわずかの水ガラスを加えて十分に撹拌した液状の粘土のことです。混合する割合を間違えると石膏型から離れないなどの問題が起こりますので正確にはかりましょう。粘土の乾燥具合で水の割合も変わってきますからデーターを記録しておきましょう。
 
①   粘土を薄くスライスして乾燥させておきます。水に溶けやすくなります。   
 できるだけ少量の水で溶くほうが作業効率の良い泥漿となります。ところがハンドミキサーを使っても、少ない水では容易に溶かすことができません。   
 むしろ気長に放置して溶かす方が利口というものでしょう。陶芸はあせらないことが大切だといえます。
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② ポリバケツによく乾燥させた粘土1㎏に対して水350mlを加え、ハンドミキサーでよく撹拌します。なかなか溶けませんが水はできるだけ少なくするほうがよいでしょう。   
 さらに全体量の0.2%の水ガラスを加えます。水ガラスのアルカリが泥漿の流動性を良くします。トロリと糸を引くように流下すれば成功です。   
 水ガラス(ケイ酸ソーダ)が手に入りにくい場合は重曹でも良いらしいのですが、分量のデータがありませんので、あらかじめ水溶液にしたものを徐々に加えて、加減してください。
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鋳込み作業  
 
① 一昼夜ねかせておいた泥漿をさらにミキサーでよく撹拌します。寝かせるほどよい泥漿になります。
② よく乾燥させた石膏型を直射日光の当たらない水平な場所に置き、泥漿をゆっくりと注ぎます。
   泥漿の中にダマが残っていると仕上がりが悪くなるので茶こしでこしながら注ぎましょう。
   石膏が水分を吸収していくので、表面張力で盛り上がるくらいに入れておきます。
 そのまま放置します。
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③  石膏に接する部分の泥漿がかたまり、適当な厚さになったところで泥漿を石膏型からバケツに戻し、直射日光の当たらないところでゆっくりと乾燥させます。
   泥漿を流した時に石膏型のふちに泥漿が付いてしまいます。触って指先につかなくなるまで乾かしたら、柔らかいうちに上手に端からまくりこんで剥がしていきます。へらで削り取っていく方法もOKです。
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④ 指先だけで上手に剥がすことができました。タイミングを外して乾きすぎてしまうと、きれいに取れないので注意しましょう。
   後は風通しの良い場所で直射日光を避け、ゆっくりと乾燥するのを待ちます。
   乾燥が進むと、右の写真のように型との間に隙間ができてきます。
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⑤ 型の中の粘土は乾燥とともに、少しずつ縮んでいき、自然に型からはずれます。むりやり熱風をあてたりすると作品が変形したり、石膏型がいたむので、自然に乾燥させましょう。 
  ふちをきれいに削り、湿らせたスポンジで軽くなでます。さて、うまくいったので量産してみましょう。
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 単なる勢いですが、夏と言えば、そば、ソーメン、冷やしうどん、冷麦。そこで蕎麦猪口も作ってみました。薬味をのせる皿が、蓋になるという、よくありがちなパターンですが、やってみます。   
 型作りは細密に致します。蓋の高台が蕎麦猪口の口にきっちりとはまること。それでこそ蓋ということができ、完全なる相棒と呼ぶことができると思うのです。どうでもいいことかもしれませんが、仲間を呼んで、楽しいひと時を送るには、おしゃれな演出だと思いませんか?        
 この器は茶碗蒸しにも使えそうです。 
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 よい石膏型ができたら、右のようにシリコンゴムを流し込んで原型を残しておくのがよいでしょう。
   皿のような薄い型なら、シリコンゴムが硬化した後容易に石膏型から抜き取れますが、厚い型は抜き取りにくいので、中空のゴム型になるようにしておかなければなりません。
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