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プルシアンブルーで布を染めました。 [アート]

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 今回はプルシアンブルーの特性を生かし、青写真の要領で布の染色に挑戦いたします。つまり、ヘキサシアノ鉄Ⅲカリウムと緑色クエン酸鉄Ⅲアンモニウムを混ぜて作った水溶液が太陽光線に当たることによって紺色に変化する現象を利用して、布を染めてみようというわけです。

 プルシアンブルー、ベロ藍、ベルリンブルー、ターンブルーなどと呼ばれているこの物質、伊藤若冲や、葛飾北斎に使われたことで有名ですが、染色に用いられることはあまり聞きません。

 なぜなら、水に対しては安定ですが、熱や強アルカリには弱く、環境内で分解してシアン化合物が遊離する可能性があるといわれているため、国内法上毒劇法などではシアン化合物の例外として扱われており、水道法や、土壌汚染対策法に触れるためだと考えられるからです。したがって染色業には活用できません。

 しかし、工場などで大量生産などををしないかぎり、土壌汚染も水質汚染も問題なく、人体や環境に悪影響はないといわれています。なぜならば、ヒトの肝臓は一時間あたり数十ミリグラムのシアンを無毒化する能力を持つため、シアノ錯体が分解して発生するシアンは少量であれば問題にならないからです。

 したがってクラフトづくりで楽しんだり、作品を日常生活で利用してもなんら問題はないといえるでしょう。だから芸術作品に積極的に利用することは前向きな発想であると思えます。

 私には染色の経験は多少ありますが、学生のころに習った程度です。とりあえず手元に薬品がありましたので暇にまかせてやってみました。 
 
用意するもの
 ・布
 ・緑色クエン酸鉄Ⅲアンモニウム
 ・ヘキサシアノ鉄Ⅲカリウム
 ・上皿天秤
 ・乳鉢
 ・精製水
 ・メスシリンダー
 ・ピペット
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手 順
 感光液は2つの薬品を混ぜるとできます。今回は実験なので少なめに調合します。
 
① 
   A液 
   緑色クエン酸鉄Ⅲアンモニウム15gを水60mlに溶かした溶液を作ります。
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 B液
    ヘキサシアノ鉄Ⅲカリウム8gを水40mlに溶かした溶液を作ります。
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   A液、B液は明るい部屋で別々に作っておきます。

 次に暗室でそれぞれを遮光ビンに入れ、よく撹拌し、半日寝かせます。

 写真はアルミ箔で遮光している状態です。
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 夜暗い場所で混合液を浅い器に出してから布を浸します。そのまま乾燥させます。 うまく乾燥させると黄緑色ががって見えます。干すとしわができるので、板などに張り付けて乾かすといいでしょう。しわができるときれいに感光できません。朝になって明るくなっても大丈夫なように遮光して乾燥させましょう。 
   

 タオル地の布です。ツタの葉をのせて上からガラス板で押さえ、屋外の直射日光で15分から20分露光させます。
 天気にもよりますが、あまり時間が短いと水洗いですべて流れてしまいます。この場面は覆いを取ったところです。
 ここからすばやく水洗いして乾燥させます。
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⑥ 
 流水でよく水洗いし、薬品を流してしまいます。
 なんとかぼんやりと図柄はでましたが、タオル地はエッジが強くでないので、くっきりとした図柄は期待できないようです。
 言い換えれば図柄の選定は作者の腕の見せ所かも。
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 同じように、さらしのような布で試してみました。
 エッジがシャープに出ています。葉っぱの浮いた部分で遠近感が自然に表現できていました。感光ムラは手作りらしいご愛嬌です。
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写真を染め付ける
次は写真を染め付けてみようと思います。右のような写真を撮影しました。
 フォトショップでネガ状態に加工してから、インクジェットプリンタでOHPシートに印刷します。OHPとは「オーバーヘッドプロジェクター」のことです。なつかしいですね。
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 これがインクジェット専用OHPフィルムです。最近学校で、「オーバーヘッドプロジェクター」はほとんど使われていないと思うのですが、まだまだ需要があるようです。
 コピー機でトナーを印刷することは知っていましたが、インクジェットプリンタで印刷できるとは知りませんでした。両面印刷できるので印刷は難しくありません。
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 モノクロでネガ状態に変換した画像です。フォトショップを使い、Ctrl+Iで変換しました。
 私の使っているエプソンEP801AはOHP印刷に対応していないので印刷専用フィルムの裏に普通紙をセロテープで貼り付けて機械をだまし、印刷してやりました。
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 夜に暗い部屋で作っておいた感光布の上に、このネガフィルムをのせて、ガラス板をのせて風で飛ばないようにし、天気の良い日に屋外で露光させました。

 露光前はこのように黄緑がかった色をしています。この日は天気が悪かったので30分以上日に当てることになりました。
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 覆いを取ってみると映っていないように見えましたが、流水で洗うと像が浮かび上がります。感動ものでした。お子さんがおられたら、ぜひ見せてあげてください。
 その後十分に水洗いをして乾燥させ、酢酸に浸けて再び水洗いし、乾燥させました。ちょっとおしゃれな作品?ができました。
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 庭の写真を染めてみました。モノトーンなので光の加減をうまくとらえた構図で写せばもっと味わいのある作品になるかも。 
 色ムラが小粋な感じで気に入っています。
   額に入れて壁にかけてみました。布の端をわざとほつらせたり、擦り切れた布に染め付けた方がいい感じになっただろうと悔やんでいます。
      

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プルシアンブルーをつくってみました [アート]

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 今回は放射性セシウム結合剤として、事故でセシウムを摂取した場合に実際使われたというプルシアンブルーの合成に挑戦いたします。プルシアンブルーの作り方は簡単です。  
 プルシアンブルーは我が国では江戸時代にコバルトなどの高価な顔料に代わって輸入され、浮世絵の顔料に使用されました。 葛飾北斎の版画や、伊藤若冲の絵画に使われたということです。
 
 この日本で紺青と呼ばれる青色顔料は、1704年ドイツで偶然発見されたそうです。鉄のシアノ錯体に過剰量の鉄イオンを加えることによって得られる顔料です。作り方により、プルシアンブルーはベルリンブルー、ターンブルー、アイロンブルー、などとも呼ばれています。日本では「ベルリンブルー」が訛って「ベロ藍」とよばれていました。  
 陶芸でいう「ベロ藍」とはいわゆる「コバルト」を指し、「人工呉須」とよばれ、自然から採取される酸化コバルトを含んだ「天然呉須」よりも鮮やかです。この「ベロ藍」で印刷され、大量生産された磁器は「印判手」ともよばれて、ある意味では品のない安物としてあつかわれてきました。  
 間違えてはいけないのは、陶芸でいう「ベロ藍」とはコバルトから作られたものであって、鉄から作られたものではないということです。プルシアンブルーとは別物です。コバルトは釉薬に混ぜると少量でも藍色に発色して焼きあがります。ところが鉄から作られたプルシアンブルーは顔料として絵具や染色には使えますが、熱に弱く、分解して藍色には焼きあがりません。 
 
用意するもの
 
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ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)
酸カリウム(赤血塩)
硫酸第一鉄(結晶) 乳  鉢 上皿天秤
       
 ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム(赤血塩)と硫酸第一鉄(結晶)は、いずれも通販で簡単に手に入ります。
 
プルシアンブルーの作り方(手順)
 
① 
  硫酸第一鉄を2グラム取り出します。写真のようにやや粗い結晶です。  
 鉄分を含む低酸素の湧水で、透明なものでも代用できましたが、くんできて半日で使えなくなりました。
  鉄イオン濃度や、存在する鉄バクテリアの量など、条件が不安定なため一定の結果が出ません。 
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② 
  精製水を4㏄加え、よく混ぜます。かなり溶けにく いので、 乳鉢を使うほうが作業は早いでしょう。
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③ ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム25gを精製水75㏄に溶かし、赤血塩の水溶液を作ります。これもなかなか溶けないのでしっかりと撹拌しましょう。 
 作った水溶液は保存がきくようなので、ホームセンターで売っている薬瓶などに入れておきます。
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 ②で作った硫酸第一鉄水溶液に③で作ったヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム水溶液を3cc加えます。
  
 直後に青い沈殿を生じます。 
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 撹拌すると瞬時に粘り気が出てきますので、しっかりと撹拌します。すると不思議なことに体積がふえていきます。

 これでプルシアンブルーができました。その後乾燥させることにしました。当然、顔料ですからそのまま膠水や亜麻仁油などで溶けば絵具として利用できるでしょう。 
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 できたプルシアンブルーは2週間ほど自然乾燥し、粉砕して保存します。乾燥するのになぜか大変時間がかかります。
       
 写真のように水でよく洗っても乳鉢が青く染まっています。染色に利用されてきたことに納得できます。 
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 このプルシアンブルーの藍色はパイプ洗浄剤のような強アルカリに浸けますと、すぐに消失し、酸化鉄本来の色に戻ります。

 プルシアンブルーは通常では変化することはほとんどありませんが、熱やアルカリに弱く、分解し、変色します。
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