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鉄バクテリアの観察 [実験]

 湿原などで、水に油が浮いているような状態を見かけたことはありませんか?それは鉄バクテリアの分泌物だと言われています。水中をよく見てみると、黄土色のふわふわした物があり、これをソブなどと呼んでいます。

   この油膜のようなものがどうやってできていくのか、また、その結果どんなことが起こっているのか観察してみました。ソブを発生させている用水から湧水をくんで、できるだけ空気にふれないように密封し、持ち帰りました。   
 
観察開始
 
 湧水の色は透明でPHは弱酸性でした。採取して1時間以内に広口の容器に移して放置すると、表面に被膜が生じました。鉄バクテリアが活動をはじめたようです。

   気温は約30℃。被膜の色は約10時間で安定し、壊しても再度発生することはありませんでした。水の色は透明から茶色に変化しました。
 
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1時間後 2時間後 3時間後
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4時間後 6時間後 10時間後
     
 その後、容器に茶色の沈殿が付着していきましたが、乾燥させると粉状の黄土色になり、1200度に加熱したところ、こげ茶色に変化しました。

   おそらく、この付着物は鉄バクテリアが水中の2価の鉄イオンを酸化し、沈殿させたものと思われます。

 古代日本では芦などの根に、この酸化鉄が付着し、その根が腐って、数センチから数十センチの筒状になった「高師小僧」とよばれる物質を焼き、鍛造して純鉄を得ていたということです。
 それにしてもこの油膜のようなもの、不思議な色ですね。

 さて、この湧水が採取できる場所はどこに存在するのかということですが、ほぼ全県で探すことができると考えられます。

 1、湿原(ビオトープ)があるところ
 2、古来より鉄を産出しているところ (地名に鉄に関する漢字が使われている)

 例

・菅(菅の生える場所は砂鉄が取れる所が多いそうです。
・芦(芦は鉄分を多く含んだ土地では、鉄バクテリアの作用で根に褐鉄鉱の塊が形成されるといわれています。
・祖父(ソブは鉄気のある土や水を指します。祖母も同じでしょう。)
・井出(井出は井堰と同義で流れをせき止めている場所です。鉄穴流しでは水路のことを指し、「鉄穴井出」と呼ばれています。
・他に鈩・多々良・吹・扇・袋・釜などの文字がついている場所

 3、山道の法面で黄土色に変色しているところ
 4、山間部の田んぼの用水路
 5、自然公園で小川の流れている遊歩道付近
 
 
 などを注意深く探していると見つかるでしょう。街中の用水路などでも油が浮いているような鉄バクテリアのすみかが見られますが、採取には適していません。やや流れの感じられる場所で、地中から透明な水が湧き出しており、付近にソブが見られるようなところでの水を採取するのがよい結果につながります。

ビオトープに行ってきました。
 
以前、鉄バクテリアを採取した場所の近くにあるビオトープへ足を運んでみました。
 
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 左の写真が地域の住民で保護しているビオトープの一部です。

 この景色は前と同じで自然の生態系が守られているといった雰囲気です。

 *ビオトープでは鉄バクテリアの採取をしてはいけません。
   
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 湿地の水面に青く油のような浮遊物が見られますが、これが鉄バクテリアの分泌物です。

 昨年は同じ時期でしたがもっと一面に発生していました。今年はすくないようです。 
   
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 黄土色に見えるのがいわゆる「ソブ」です。かなり厚く堆積していました。最近雨が降っていないので流されず溜まってしまったのでしょう。

 右の写真の排水溝(10センチ平方)からちょろちょろと流れ出す透明な水の中に、未だ大量の鉄バクテリアが生息しているようです。

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